FPにできないこととは
FPの倫理の一つに「顧客利益の優先」というものがあります。しかし顧客利益のためであっても、無償でさえもしてはいけないことがあります。そのため、どこまでがFPとして仕事ができる範囲でどこからがやってはいけないことなのか覚えていきましょう。
5つの法律とやってはいけないことの例を挙げていきますが、基本的には個別具体的な作業は行ってはいけないということを意識しましょう。
弁護士法
弁護士法に基づき、「遺言書の作成指導」と「法律判断に基づく和解案の提案」は行うことができません。弁護士法で、『弁護士、司法書士でなければ、具体的な法律相談、法律事務、法的手続きを行ってはいけない』と定められているからです。
しかし、「遺言の証人」、「遺言執行人」、「顧客の任意後見人」になることはできます。遺言の証人は相続権のない第三者ならなることができますし、遺言執行人、任意後見人は(多少の例外を除いて)誰でも後見人になることが認められているからです。
税理士法
税理士法に基づき、「納税額の計算」、「確定申告書類の作成」、「税務に関する個別の相談」はできません。『税理士でなければ、顧客の税務書類の作成や個別具体的な税務相談を行ってはならない』と定められているからです。
しかし、「一般的な税務の解説」、「家庭事例についての税務解説」は可能です。これらは原則である、個別具体的な作業には当たりません。
金融商品取引法
金融商品取引法に基づき、「顧客の資産運用」、「特定の有価証券の売買」、「具体的な投資の助言」はできません。金融商品取引法では、『投資助言・代理業者として内閣総理大臣から金融商品取引業の登録を受けていないFPは、投資助言や代理業務を行ってはならない』と定められているからです。
しかし、「景気・企業業績予想」、「過去の株価推移」だとの一般的な話題については説明可能です。その上で、成果の保証や売買の強制はしてはいけないという感じです。
保険業法
保険業法に基づき、「保険商品の募集、販売、勧誘」は行ってはなりません。『保険募集人として内閣総理大臣の登録を受けていないFPは、保険商品の募集や販売を行ってはならない』と決まっているからです。日本ではFPの資格を持つ人は保険業社であることが多いので意外に思われるかもしれませんね。
しかし、「保険商品の説明」や「必要保障額の計算」は可能です。必要補償額の計算も具体的な作業にはあたりません。必要補償額の計算は「もし今世帯主が亡くなったら、遺族のその後の生活に大体〇〇万円かかる」というおおよその予測のことです。そのため、実際はあまり具体的作業という訳ではないと考えてください。
社会保険労務士法
社会保険労務士法に基づき、「裁定請求書の作成」など顧客の公的年金に関する具体的手続きは行ってはなりません。『社会保険労務士でなければ、顧客の社会保険の具体的な手続きをしてはならない』と定められているからです。
しかし、「公的年金制度の説明」や「公的年金の受給見込み額の計算」については可能です。公的年金の受給見込み額の計算は日本国民全体である程度のパターンがあります。どの条件に当てはまるかの区別も明確なので、個別作業とはいえないところもあります。そのため、とりあえず試験では、FPが行えることであると覚えておきましょう。
試験ではこう出る
FPにできないことは学科試験、実技試験ともにほぼ必ずと言っていいほど出題されています。過去15年(43回)の学科試験では35回の出題があります。ほとんどの場合で一番最初に出題される問題でFP協会らが重視している知識だということがわかります。出題方式は以下の問題1のようにシンプルですが、問題2のように「FPのできること」の問題で少し正答率が下がるようです。
問題1
税理士資格を有しないファイナンシャル・プランナーが、顧客の要請により、その顧客が提出すべき確定申告書を代理作成する行為は、無償であれば税理士法に抵触しない。(2017年1月)
問題2
ファイナンシャル・プランナーは、顧客の依頼を受けたとしても、公正証書遺言の作成時に証人となることはできない。(2020年1月)
答え
問題1は✖️。
確定申告書の代理作成はたとえ無償であっても弁護士法に抵触します。
問題2は✖️。
弁護士でなくても遺言の承認になることは可能です。
まとめ
FPのできること、できないことの見極めは個別具体的な作業かどうかで判断する。
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